思念体ふわふわ

思念体(精神的な内側のひと)のおはなしをしています。

トリックスター:問題行動の解決の糸口

トリックスター……問題行動や予想外の事件を起こす人(いわゆる学校や家庭内での困り者)やその事件そのもの。
その渦中の人は、ただのいやなやつになるか、問題の根底や取巻く環境全てをより良い形へ変貌させるヒーローとなるか。

 

以下引用です。

[トリックスターとはもともと神話や昔話などで活躍する者で、変幻自在で神出鬼没、何をやり出すかわからないのである。最低のときは単なるいたずら者で、いたずらが露見して殺されてしまったりするが、トリックスターの思いがけない活躍によって、今まで無縁と思われていたものが関係づけられたり、真実が明らかとなったりする。確かにそれは旧秩序の破壊者であるが、それが新秩序の建設に結び付いてくると、英雄として祭りあげられることになるし、ユングの言うように、「救世主の像との近似」とさえ認められる。]
[破壊を建設に変えるだけの強さが、本人にも本人を取り巻く周囲の人にも必要となってくる。周囲の人々が十分に強くないときは、トリックスターによる破壊を恐れ、トリックスターを殺すことのみを考えるであろう。]
[心理療法家は、いうなれば、トリックスターがヒーローになる道を共にすすもうとするのである。]
[トリックスターにいつも動かされていたら、破壊の連続ということだけになってしまう。]
[『心理療法序説』 著者:河合 隼雄 発行所:㈱岩波書店]]


<読み解き>
・補足:トリックスター(問題行動や予想外の行き違い)は現象のことだと思った方が良い。行動を起こした当人が悪いのではなく、その背景や原因を洗い出すことがトリックスターを生かす道になる。
トリックスターは悪いものや古い体制を破壊する必要悪とも言える。そして、再建設まで人々を導く、新しい建設的な世界を作る救世主にもなり得る存在。
深層心理学の本質「死と再生」。破壊と再建設。そのきっかけとなり得る。
・ただし、破壊者であるゆえに危険。破壊に耐えるだけの力が必要。本人、周囲、環境など、みんなに覚悟が必要。
・機を熟して現れるのなら良い。対処がしやすいし、強さがあるならその破壊にむしろ乗って行ける。そうではないから振り回される。冷静に見守って対処することが必要。
・危険な破壊者であることを心得つつ、破壊するほどのエネルギーを秘めている。これを建設の方向に持ち込めるか、その可能性を心に持ちながら対峙しないといけない

 

<思念体と絡めて考えるなら>
思念体に問題行動が起きたら、自分に最も近い存在だから結構困るんですよね。トリックスターだと考えて対処できないかな?と整頓をしてみました。

トリックスターめいたものは何?
 →思念体の異常や違和感を含んだ言動(こちらが受信に感じるなんかイヤな感じ/先方の送信にイヤな感じを練り込んである感じ)
トリックスターは問題を示唆していると考えるなら?
 →思念体は心根に近い存在のため、無自覚の無意識の異常を表出している可能性があります。異常や違和感は危険のサイン。問題行動やそのものをなかったことにすることよりも、その時々に原因は何なのかを見極めましょう。
③その違和感の原因を掘り下げてみよう!
 ・内省:二人の関係性や心身の状態の再確認
  わたしたちの……
  目的は何? 望みは何? 存在意義は何だったっけ?  怠慢をしていない?
 ・外的:それとも現況のせい?
  現実において……
  昨今で問題は起きていない? 機を逃してはいないかな?
  忘れているなにかはない? 他者との関係を疎んじていないよね?
etcetc......

考えることはその時々によるし、別にこんなにややこしく悲観的に考える必要もありません。一人で考えるとあれが悪かったこれがいけないんだと自虐的になります。なので、二人いるのだからお互いにはなしをします。
話をしてみると案外に、するすると、問題行動は……わたしが疲れているから起きたんだとか、先方が申し訳ない意図はなかったと謝られるとか、今起きている問題が解決しないからだ→じゃあどうしようかと話し合いになるとか、などなどその時々によって一番自然な反応が起きます。
そんなことに気をまわしていたら疲れるじゃないか、と思うこともあります。でも、自身の不調や継続のむずかしい時期だったなどと理由がわかるし、理由をもっていったん関係を休憩することもできるので、出来そうなときはやってみるようにしています。

長々話したけれど、結局は日頃の観察と対話と二者間の良い対処が大事ってことになりますね!

 

---おまけ①

あと、先日のアクティングアウトとしての暴走/削除と、トリックスターとしての暴走/削除は異なるんじゃないかなって思いました。

・前触れ(警告や疑問やヘルプのサイン)に対処できず起きたのがアクティングアウト的
・現況の破壊をして再建設の可能性があるのがトリックスター的。

トリックスターとしての暴走なら、破壊して再建可能かどうかが鍵になる。トリックスターを見逃さないのがアクティングアウトを避ける手立てになりそうかなって思いました。

 

---おまけ②

また、トリックスターは家族の内の一人に現れることがあるそうです。その一人が問題なのではなく、家族という小集団の構成や状態の問題が、代表として表出した状態となります。問題のある家庭の中で、ある人の精神的な症状が治まると、別の人に症状が現れるということもあるらしいです。
この場合、個ではなく、全体に問題があることを、共同で分かって解決していくことが大事になるそうです。

[家族全体は全体のダイナミズムをもっている。誰か一人だけが「悪い」ということは、まずないと言っていいだろう。家族の誰かをスケープゴートにして、後の全員が安定している、ということは割にあることだ。一人が「悪い」ようだが、問題は家族全体のことである。]
[その個人の変化を通じて全体が変ってゆくことを狙う方法をとっているのである。]
 [『心理療法序説』 著者:河合 隼雄 発行所:㈱岩波書店]]

 

<思念体と絡めて考えるなら>
・複数持ちの方ならあることかもしれない。
☆発端:誰か一人が問題を抱える
 ★BADEND→全体の問題に気づかずにその一人を嫌悪する、自分たちから遠ざける。その人を犠牲にして自分たちは正常だと思おうとする。スケープゴートにより一時の平穏を得る。でも、根本的解決にならない。その人の犠牲の後に別のひとに移る可能性だってある。
 ★TRUEEND→全体の問題があるのではと疑って、その人を責めずに、どうしてなのか考える。ちょっとおかしいんじゃない? と全体を見通したうえで声を掛け合う。心の問題は、心を配った分だけ解決につながることが多い。うそごとや表面的なのはダメ。上っ面なんてバレるし、信用が落ちるし、本気じゃないから解決しない。人への心の扱い方は、一番自分自身の心の負担の大きいほうを選ぶ、それが一番大事。

[無駄と知りつつクライエントと共に、「良い方法」を求めて右往左往することが、「人間関係」の成立にもっとも有効ということもある。(中略)関係を深めることに意義があるのだ。]
 [『心理療法序説』 著者:河合 隼雄 発行所:㈱岩波書店]]